2012/11/18

作者の不在

cinematic

たしかに上手い。上手いんだけど、どうにもその上手さが鼻につく写真というのがある。
これを例えば「うまくさい」と名付けよう。

うまくさい写真には二つの性質がある。
其ノ一、心を動かす力がない。
其ノ二、写真がドヤ顔。

うまくさい写真の最大の特徴は写真の横で作者がこちらの様子を窺っているという点にある。
その写真の横には作者がいる。

一方、心を動かす写真の最大の特徴は、そのギリギリ感にある。
それはまるで精いっぱいで、なおかつ作者が目指したのはそれでもその写真のまだ少し向こうにあるような感じ。

そしてその写真の横に作者はいない。
たしかに嘗てそこに作者は居た。しかし今は居ない。

作者はもうどこか遠くへ行ってしまったのだ。
われわれの知らないどこか、それはたぶん写真のむこう側。

その写真を見るものは、決して作者に追いつくことは出来ない。
鑑賞者が写真を見るよりも速く作者は去っていく。
我々が見ることが出来るのは作者の後ろ姿だけだ。

8 件のコメント:

  1. 素晴らしい文章ですね。

    こんなに素晴らしい写真作家の事をうまく表現した一文は無いと思いました。

    良い背中はついて行きたくなります。


    >其ノ二、写真がドヤ顔。
    思わずその通り、とニヤニヤしてしまいしたw

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  2. ふくいさんありがとうございます。
    いや、自分もうまくさい、いやヘタくさい写真を撮ることが多いので自戒を込めて書きました。
    でもいつもそうなんですがこういうことを書くと、あと写真が撮りにくくなるんですよね。
    困ったもんです。
    あ、すみません、自分からふくいさんのツイッターをフォローさせていただいたのにフォローをはずしてしまいました。
    ちょっと、政治的なTLは苦手なんです。ご容赦を^^。

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  3. すみません政治的な発言控えるようにしているんですが
    原発事故以来何かと腹がたって思わず発散してます…(ちょっと自戒)
    趣旨理解してますし、そういう方多いので
    基本写真繋がりでお願いします(^^

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  4. ありがとうございます。
    実は僕はちょっと右寄りなんです(笑)。

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  5. 今日の文章は素晴らしい!
    いえ、shinさんの文章はいつも素晴らしいんですが
    いつにも増して何だかカッコいい! よくぞ書いてくれた! と思います
    特に最後の三行が詩的でもあり大好きです
    作品が生まれた瞬間に、それは作者とは無関係に遠く旅だってゆくべきもの
    それが作品のコミュニケートツールとしての生命、だと
    なかなか趣味の世界では言い切る事がはばかれる雰囲気がありますね
    「これは私が創りましたぁ〜!!!」っていつまでも自作の隣から離れようとしない姿は
    何だか親離れ・子離れ不能の共依存の親子を観ているようで苦しいです




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  6. hiroshipsさんありがとうございます。
    「ギリギリの」写真ってなかなか撮れないんですよね。
    僕は大抵は「へたくさい」(ヘタなのに威張ってる(笑))写真でお茶を濁しています^^。
    でも印象に残る他の人の写真はやっぱり作者の後ろ姿しか見えないような気がします。

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  7. 素晴らしい。
    名文ですね。もちろん写真も。
    先日の日曜、いとこの結婚式を撮ったのですが、もう必死で撮りました。
    一般の人が喜んで見てくれる程度には撮れたかと思いますが、自分自身全く納得できていませんでした。
    果たしてその写真は、いとこの心に響くのだろうかと悩んでいましたところ、この名文を読んで少し慰められたかもしれません。

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  8. jawaさんありがとうございます。
    なまじっか写真が趣味なんて知れ渡ってしまうと
    さぞかし素晴らしい写真を撮れるんだろうとみんなに思われちゃって苦労しますね。
    僕は「モノしか撮らないから」なんて言って予防線を張ってます^^。

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