2010/04/30

アフォリズムNo.3

Don't look for zebra.

これは今取り上げている本には載っていません。
いつ覚えた言葉かは忘れてしまいましたが、強い印象と共に記憶した言葉。

シマウマを探すな。

これじゃ何のことかわかりませんね。
略さずに書くと
When you hear hoofbeats, don’t look for zebras.

背後でパカランパカランという蹄(ひづめ)の音がしたら
あ、シマウマだ、と誰が想像するだろうか、いや誰も想像しまい。
そうです。ひづめの音が聞こえたら、普通は馬を想像するわけです。
シマウマよりも馬に出会う可能性のほうがずっと高いですもんね。

つまりこれは安易に珍しい病名を思いつくことを戒める箴言です。

症状、身体所見、画像所見、血液生化学検査などの複数のサインが
すべてたったひとつの疾患を指し示しているなら話は簡単です。
でも実際の現場ではひとつの疾患ですべてのサインを合理的に説明できることは
むしろまれですし、矛盾するサインが同居していることもよくあります。

ではどうするか。

すべてのサインを説明できるような非常に珍しい病気を一つ考えるか
あるいは複数の病気の併存を考えるか。

前者がシマウマであることはおわかりと思いますが
いずれも情報の軽重を勘案していないという点では同じです。
全ての情報を等しく扱おうとすると、必然的に
全部のサインを網羅する珍しい疾患を考えるか
複数の疾患で全部のサインをおおわなくてはならないからです。

旧約聖書に「天の下に新しきものなし」という言葉がありますが
出来るだけポピュラーな病気を第一に考えるべきでしょう。
どの情報が重要で、どの情報は無視しても良いのかを知らなければなりません。

そのために必要なのは経験です。
経験が十分でない場合はどうすればよいでしょう。
この箴言はそのときに意味を持つのです。







アフォリズム No.2

Always examine the part that hurts. Put your hand on the area.

examineというのは、詳しく調べるという意味。
直訳すれば
痛む場所を常に詳しく調べなさい。あなたの手をそこに当ててみなさい。

ごく当たり前のことだ。
そんなわかりきったことを、なぜあえて書くのか。
もしあなたが医者なら、それが必ずしも当たり前ではないことを知っているだろう。

医者は患者の訴えを聴きながら何を考えているのか。
それはある種の連想ゲームに似ている。
パエリア、セルバンテス、サグラダ・ファミリアと聞いてスペインを連想するように
医師はいくつかのキーワードに共通する疾患を連想する。

だが患者の訴えは多岐にわたる。
それら全てが今患者を悩ませている特定の疾患を指し示しているのではない。
洪水のあと滔々と目の前の河を流れていく椅子や机やその他諸々の家具のなかから
医者は判断の材料になる家具だけを河から引きあげていく。
そして疾患名の目星が付いたら、その疾患に特有の徴候がないかを直接患者から聴き出したり、患者の身体を見たり触ったりして確かめる。

問題は、医師が「わかった」と思ったあとなのだ。
わかってしまったあとでは、何が河を流れていこうと医師はそれを河から引き上げない。
たとえ河をイタリアの国旗が流れていこうとも、スペインはスペインなのだ。

そして、えてして最も重要な情報は患者が診察室をあとにする直前に発せられる。必ず。
「そういえば数日前から右の腰のあたりが少し痛むんです」
医者はキーボードを叩きながらこう言う。
「わかりました。湿布を出しておきましょう」

ああ、我々はこれで何度痛い目にあったことか。

患者が痛いという場所は、必ずそこを手で触って確認しなければならない。
手で触るためには、そこにある衣類をどけて、まずそこを見なければならない。
胸痛を主訴に来院した患者に、あなたが心電図と心エコーと採血をオーダーする前にそこを見れば
わずかな発疹を発見して初期の帯状疱疹だと判断できるかもしれない。
痛みを訴える老人の膝を触れば、その熱感と腫脹から偽痛風と診断が付くかもしれない。

だがそれらはすべて見て、触ることからしか始まらない。
そして我々がそこを見ず、触りもしない理由は同業の故に痛いほどわかるのだが、
それゆえにこそこれは守るべきルールのひとつなのだ。





2010/04/29

アフォリズム




吸引細胞診の勉強で1992年に渡米した時、大学の生協でこの本を見つけた。
これは医師が守るべきルールを集めた小さな本である。
編者が医師としての短かからぬ経歴の中で少しずつ拾い集めた425の箴言が記載されている。

僕自身はこの本から多くを学んだ。
研修委員長をしていた頃はレジデントが修練期間を終える時に1本のワインにこの本を付けてプレゼントしたりした。

いずれこのブログで取り上げたいと思っていたが、日本ではすでに翻訳本が市場にあるため、僕が勝手に訳してブログに掲載すると著作権法に違反する可能性もあるだろう。

ただこういったアフォリズムは編者も述べているとおり、誰がその箴言を思いついたかよりも、無名の医師が口にし、その有用性によって人口に膾炙していくことによって命脈を保っていくものだから、その職務に従事するものにとっての共通の財産と考えるべきだろう。

あからさまに著作権に抵触しないよう、一回に一文だけを取り上げていきたいと思う。
またここに取り上げる箴言は網羅的ではなくかつ逐次的でもない。
その記念すべき一回目に取り上げる箴言は、

Sit down when you talk with patients.

中学で習う単語ばかりで出来た短い一文。
「患者と話をする時には、座りなさい」

この一文を読んだだけで、ざわついていた心のおりが底に沈んで、
僕の心はしーんとする。

立ったまま患者と話をしてはならない。
通りすがりに患者と話をしてはならない。
立ち去りながら患者に話をしてはならない。

つまり、そういうことだ。






Green Green Green !

_4296561
Large view

ブログを初めてもうすぐ丸3年。
そろそろ潮時か。


_4296578
Large view

もうすこし続けるか。


_4296580
Large view

Sonny ClarkのCool Struttin'を聴きながら写真の整理。


_4296591
Large view

Art Farmerのトランペットと
Jackie McLeanのアルトサックス
Sonny Clarkのピアノ
Phily Joe Jonesのドラムスと
Paul Chambersのベース。

Jazzが一番格好良かった時代の一番かっこいいアルバム。


_4296597
Large view




_4296610
Large view




_4296616
Large view




_4296618
Large view




_4296621
Large view




_4296627
Large view




_4296628
Large view

今日撮った中で一番気に入った一枚。
いつまでも眺めていたくなる。
うっとり。


_4296631
Large view




_4296574
Large view

かりんの花が咲いている。


_4296636
Large view




_4296664
Large view




_4296670
Large view




_4296683
Large view




_4296680
Large view




_4296691
Large view

さわやかな春の風が吹く4月29日。
今日の写真は全てE-P2君とCarl Zeiss Makro-Planar T* 2/50 ZF君でした。

2010/04/25

春の気

_4256469
Large view

タタリ神に触れた腕に忌まわしい痣が残るように
「政治」に触れるとその日一日心がざらつく。


_4256476
Large view

せめて自然に触れて正気を取り戻そう。


_4256491
Large view




_4256497
Large view




_4256507
Large view




_4256511
Large view




_4256516
Large view




_4256523
Large view




_4256536
Large view




_4256539
Large view




_4256551
Large view




_4256554
Large view

悪が存続していくための唯一の条件

むかし僕が高校生で、毎日を悩みの渦の中で暮らしていた頃、ロブ・グリエの「消しゴム」という小説の中の「彼は青二才のようにたっぷりと悩んでいた」という一文を読んで、そうか、悩みというのは普遍的な事象ではなくて、単に僕が青二才だからなのだと目がさめたことがある。

もちろん僕はもはや青二才ではないので、政治というものに淡い期待を抱いたりしない。良い政治というものが天然記念物のように現れることが絶対にないとは言わないが、そもそも政治というのはパワーと同義語であり、良い人は基本的にパワーを持っていない以上、政治と悪とは同義語なのだ。

政治が悪でも構わない。
我々自身の内にさえ悪はあるのだから。
だがその悪でさえ、それが存続していくためには条件がある。

人々の財貨をむしばんでも、心をむしばんではならない。

それが、この世で悪が存続していくための唯一の条件である。
それさえ守っていれば、悪は生きながらえることができる。

さて、医療の世界では、本人の心に大きな歪みがあるのに、本人には病態が発現せず、まわりの家族や友人に病気が発症するという現象がしばしば見られる。
本人の業が強すぎて、みずからの発症を許さない分、周りの人々が発症を引き受けるのである。
政治の世界においても、政治家がみずからの高邁な理想や名誉欲のために何かを隠したり私財をため込んだりすることは、まわりにそれほど大きな影響を与えるわけではない。
だがある種の言動は、まわりの人々の心を損なう。
そしてそれは時に取り返しのつかないほど深い障害をまわりの人々に与える。
えてしてまわりの人々はそのことに無自覚である。
自覚できないために、それはしばしば魂の病として発症してくるのだ。





2010/04/18

ミクロの世界に遊ぶ

_4186337
Large view




_4186338
Large view

今日はE-P2にLUMIX G VARIO 45-200mm/F4.0-5.6と
Raynoxのミクロの探検隊のx12のレンズを付けてスーパーマクロを撮ってみました。


_4186353
Large view




_4186356
Large view




_4186364
Large view




_4186372
Large view




tiny red bugs
Large view

カタバミの花をスーパーマクロで見たらものすごく小さな赤い虫を発見。


_4186390
Large view




_4186402
Large view





_4186419
Large view




_4186443
Large view

庭に生えているスミレ。


melancholy eys
Large view

メランコリーに伏し目がち。

前回のmaidenで何だか深く満足してしまって
もう別に写真を撮らなくてもいいやと思ってしまった。

カメラをさわらなくても平気というのは僕にとっては初めての経験。
このまま写真を撮らなくなってしまうんだろうかと思ったけど
スーパーマクロだったら撮れるかもしれないと思って出かけたら
ひさしぶりに更新できました。

今日撮った写真で一番気に入っているのは何と言っても一枚目の写真。
流れるようなボケは偶然の贈り物です。
空からひらひらと舞い降りてくる天恵のような一枚。

2010/04/11

maiden

_4116238
Large view

目で触ってみよう。


_4116245
Large view

目で嗅いでみよう。


_4116263
Large view

目で舐めてみよう。


_4116273
Large view

以下すべてR指定です。


_4116277
Large view




_4116279
Large view




_4116280
Large view




_4116282
Large view




_4116286
Large view




_4116294
Large view

twitter